なぜ個人事業主は売上が伸びると法人化したがるのか

事業を営む場合、個人事業主として活動する方法と、株式会社などの法人を設立して活動する方法の2パターンあります。

個人事業主として事業を始めた人でも、ある程度の売上が出ると個人から法人に変更する「法人成り」を行う人が一定数いますが、法人成りをする最大のメリットは節税です。

今回は、法人で活動することが個人事業主よりも節税になる理由を解説します。

法人税は所得税より最高税率が低い

事業で利益が発生した場合、個人事業主は所得税、法人は法人税が課されます。

所得税の最低税率は5%と低水準ですが、利益(所得金額)が多くなるほど税率は上昇し、最高税率は45%にもなります。

 

一方、中小企業に対する法人税の最低税率は15%と所得税よりも高いですが、最高税率は23.20%と所得税の約半分です。

利益が800万円を超えたあたりから、所得税ではなく法人税として税金を納めた方が節税になるため、事業が軌道に乗った個人事業主ほど法人成りをするケースが多いです。

赤字の繰越期間は個人3年・法人10年

事業で赤字が発生した場合、青色申告の手続きを行っていれば、個人事業主は最大3年間赤字を繰り越すことができます。

繰り越した赤字は翌年以降の黒字と相殺することで、利益を圧縮することが可能です。

法人税にも赤字の繰越制度(欠損金の繰越)がありますが、繰り越しできる年数は10年と所得税よりも長いです。

また法人税には、確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻すことができる、「欠損金の繰戻しによる還付制度」が存在します。

繰戻しの制度を適用すれば、法人税の還付を受けることができますので、赤字が発生した際の税制についても法人の方が整備されています。

法人化するデメリットは?

法人を設立するためには費用がかかりますし、確定申告などの事務手続きの負担は個人事業主よりも重いです。

節税面では個人事業主よりも法人の方が有利ですが、利益が少なければ法人税として支払う税金の方が多くなります。

また従業員を雇った場合には、従業員の社会保険料を負担しなければならないため、事業者全員が法人として活動した方がいいわけではありません。

節税面以外の要素も比較することが大切

個人事業主と法人のどちらで活動するか悩まれている方は、節税面以外の要素も比較してください。

たとえば法人は個人事業主よりも社会的信用力が高く、1人で事業を営んでいる場合でも、法人成りをしていれば肩書は代表取締役となります。

しかし法人設立には費用がかかりますし、廃業する際も解散手続きが必要です。

個人事業主は、簡単に事業をスタートできることが長所であり、事業をすぐにやめることができるのも利点の一つです。

事業内容や事業規模によって、個人事業主と法人のどちらがいいかは変わってきますので、専門家に相談するなどして事業形態を決めてください。